トラジャ 伝統的なお葬式の見学
伝統的なお葬式の見学
人の生死に関わる儀式はその土地、文化によって様々だ。
前回は死者が埋葬されるお墓の見学を記事にしたが、より深く、彼らのお葬式の特徴を感想を交えてまとめてみた。
今回の記事ではトラジャ族のお葬式の概要を説明して、実際に見学した内容は次回の記事にする。
トラジャ族のお葬式の3つの特徴
『トラジャ族は葬式のために生きる』とも言われるほどお葬式を大切に考えている。
大きな特徴として3つ挙げられるだろう。
- 葬式に莫大な費用が必要
- 遺体を自宅に長期間安置する
- 葬式の最後に水牛を屠る
上から順を追って簡単に説明していく。
葬式に莫大な費用が必要
トラジャ族の葬式は村の人々を呼んで盛大に行われる。
会場の設営やお客さんにふるまう食事、葬式の最後に屠られる水牛の飼育など…。
そのためかなりの費用が必要となり、お金が足りない人は借金をすることもあるそう。
『葬式のために生きる』と言われるほどの民族だから、できる限り盛大に死者を送り出したいという気持ちの表れだろう。
お金の調達のために数か月から、長い場合は数年かける場合もあるという。
日本人の感覚からすると驚くが、人によってはすぐに故人を送り出すことができない現実があるようだ。
遺体を自宅に長期間安置する
では、葬式の準備ができるまで遺体はどうするのか?
なんと、自宅に安置しているのだという。
トラジャ族の文化では、葬式が執り行われてから故人は死者として扱われるため、遺体を自宅に保管しながらも家族は日常生活を送るらしい。
生者と死者の境界を『生物的な死』ではなく『儀式の前と後』としているところに彼らの思想の大きな特徴があると言える。
葬式の最後に水牛を屠る
盛大なお葬式の最後には、お客さんたちが見ている前で水牛の首にナタを振り下ろす。
私が見学させてもらったときは一匹だったが、権力者や富裕層の場合は2,3匹の水牛を屠ることもあるそうだ。
その後、肉は客人にふるまわれたり手土産にされる。
ここで『水牛ちゃんがかわいそう!』と思ったあなた、ちょっと待ってほしい!
水牛は彼らにとって非常に高価で、私たちに例えると車を購入するのと同じぐらいの感覚。
小さい頃から大切に育て、いいエサをあげて、毎日散歩もさせる。
写真でよく見るような、畑仕事などの労働をさせることもないぐらい大切にする。
村を散策していると、水牛が気持ちよさそうに日向ぼっこをしている姿を見ることができる。
なぜこれほど大切にされるかというと、水牛は死者をあの世に送り届ける役割を担っているためだ。
手塩にかけて育てた、子ども同然のかわいい水牛を、葬儀の日にだけ屠る。
『水牛ちゃんかわいそう!』と思ったあなたは胸に手を当てて良く考えてほしい。
現代では大量生産・大量消費の中で牛や豚をはじめとする動物が市場に出回り、期限が過ぎたものは廃棄処分されたり、食べきれなかったものはモノ同然にゴミ箱に捨てられている現実があることを忘れないでほしい。
どちらが『かわいそう』だろうか…。
話が逸れてしまったが、私たちが考える以上に水牛は大切に扱われているのだ。
ちなみに、トンコナンハウスの前にぶら下げられている角は葬式の時に屠った水牛のものだ。
角の数の多さが富や権力の象徴とされるのはそういうことだったのか!と納得でした。